Donor 献呈者
Joos van Cleve
Triptico de La Anunciacion c1515-20,112x85cm
Santo Domingo de la Calzada Spain
Joos van Cleve,
The Altarpiece of the Virgin Enthroned,
1525/1530,Vienna, Kunsthistorisches Museum
95x70 L/R 95x30
center, Saint Mary with Child and St Joseph, wings, St George and St Catherine with the donors
初期フランドル派の絵画はイタリアの初期・盛期ルネサンスとほぼ合致しますが、キリスト教の宗教画や小規模な肖像画が多く、イタリアで勃興したルネサンスとは異なり、物語性のある絵画や神話画はほとんど描かれませんでした。絵画作品は支持体に木材を使用した板絵が多く、一枚の板からなる作品、あるいは複数枚の板を組み合わせた三連祭壇画や多翼祭壇画などが制作されました。多くの祭壇画で見られるのは、右下の祭壇画にみられるように、パネルに献呈者とその守護聖人が描かれていること、その際男は左パネルに、女性は右パネルに描かれ、ななめ前を向いていること、後ろは風景があることです。
Joos van Cleve, The
Adoration of the Magi, Prague,
Narodni galerie Praze, on loan from the Art Collections of Prague Castle
72x69 L/R70x32
献呈者とその家族が守護聖人とともに左右の両パネルに描かれています。
Joos van Cleve,
The Descent from the Cross, 1524 Städelsches Kunstinstitut, Frankfurt am Main
commissioned by Gobel Jobelinus Schmitgen and installed by 1524 in a side altar of the church of Saint Maria Lyskirchen, Cologne
左右両パネルに聖人が描かれ、献呈者(Gobel Schmitgen)は中央パネルの左側に描かれています。
Nicodemus, Mary, Mary Magdalene, St John,
left wing St Veronica
right wing Joseph of Arimathea his pointed hat identifying him as a Jew
ニコデモは新約聖書のヨハネによる福音書に登場するユダヤ人、イエスに共鳴した人物として描かれている。
ヨハネ福音書によればニコデモはファリサイ派で最高法院の議員であったが、イエスに敬意を払っており、夜ひそかにイエスを訪れ、問答をする。(ヨハネ3:1-21)ユダヤ人指導者たちがイエスを非難する場では「我々の律法では、罪の証が無ければ裁かないではないか」と、彼を弁護している。(ヨハネ7:51)イエスの処刑後は、使徒や他の弟子たち、アリマタヤのヨセフとともにイエスの遺体を引き取って、埋葬している。
左パネルのヴェロニカはベレニケ(Berenice)ともいい、エルサレムの敬虔な女性であった。彼女は、十字架を背負いゴルゴタの丘へと歩くキリストを憐れみ、額の汗を拭くよう自身の身につけていたヴェールを差し出した。キリストは彼女の申し出を受けて汗を拭き、ヴェールを彼女へ返した。すると、奇跡が起こった。ヴェールには、キリストの顔が浮かび上がっていたのである。この伝承から、絵画や彫像の聖ヴェロニカは、聖顔布を手にした姿で表される。
右パネルのアリマタヤのヨセフ(アリマフェヤの義人イオシフ)は、新約聖書に登場するユダヤ人。イエスの遺体を引き取ったことで知られる。
Joos van Cleve, The Descent from the Cross altarpiece, Edinburgh, The National Gallery of Scotland 107x71 l/r109x32
Left wing St John the Baptist with a donor(Jan Perls), Right St Margaret with a donatrix(Digna de Herde) early1520s
JOOS VAN CLEVE
TRIPTICO DEL DESCENDIMIENTO CON DONANTES
c1520
La Coleccion Masaveu, Madrid
この二枚はキリスト降架ですが、献呈者が左右のパネルに守護聖人とともに描かれています。なお、キリストの姿勢は先に見たウェイデンのキリスト降架と同じ姿勢をしています。これまで見てきました通り、クレーフェの三連祭壇画の左右両パネルには献呈者とその守護聖人が描かれているか、聖人のみが描かれています。聖人は必ず描かれています。
さて、西洋美術館の三連祭壇ですが、私が見たクレーフェの三連祭壇画でこれだけは左右パネルに聖人が描かれず、献呈者のみが描かれています。これについては後ほど言及いたしますが、その前に、これと同形式・同主題のクレーフェ作品がニューヨークのメトロポリタン美術館とナポリのカポディモンテ美術館にもありますので、これらを比較してみましょう。